さいきん、自分で気づいたことと、人に言われてはっと、気づいたことがある。
前者は伏せておきたい。 後者のことは、これはバイト先の七十を過ぎた翁の発言で、新しいバイトをはじめて五ヶ月、さほど親密でないその翁がわたしにふと、
「下山くんはマイペースやからなあ」
なんの、見とったらわかるんや、とも翁は言った。
はっとして、なるほどわたしはたしかにマイペースにちがいないとおもった。 要するに道ゆくさまざまなせっかくの人の意見をあまりきかず、振り返ればわたしは自分がそのときやりたいことを良いも悪いも自己の判断でもってやってきたのだと気づいた。 このことは、客観すればじつにマイペースなやつである。
如上のことについて是非のかんかくは持たないが、あるいはマイペースというのはときに無用なまわりみちを選んでいるのかもしれず、ほかにショートカット的なみちや便利な乗り物で現地にゆく術もあったかもしれない。
であるがマイペースというのはじつに神妙といってよく、なにかの欲に駆られていない。
マイペースやからなあ、といった翁の言葉に、わたしはしばらくのあいだたのしませてもらったことは事実である。